フォークリフトにおける労災事故
はじめに
倉庫や工場、物流センターなどに欠かせないフォークリフトは、数トンの重量物を自在に扱える一方、わずかな操作ミスによって重大な挟まれ・巻き込まれ事故が発生します。特に後方視界の悪さと死角の多さから、歩行者の足をひいたり壁との隙間で作業者を挟んだりする災害が後を絶ちません。死亡や切断・骨折を伴う事故では、労災保険だけでは到底カバーできない大きな損害が生じるため、会社や派遣先の会社に対し安全配慮義務違反や使用者責任等を根拠に民事損害賠償を請求する必要があります。
フォークリフト事故で生じやすい主な損害
フォークリフトは車両重量2〜3トンあり、荷役中はさらに荷物の重さが加わるため、足の骨折・切断、衝突による腰椎圧迫骨折、骨盤骨折など重大な後遺障害が残りやすい機械です。労災保険が給付する治療費・休業補償・障害補償は重要なセーフティネットですが、労災保険では慰謝料の給付がなく、逸失利益も公的基準で控えめに算定されるため、民事賠償を併用して初めて実損害に見合う補償が得られます。
当事務所が携わったフォークリフト労災の解決例
■事例1 工場内でバックしたフォークリフトに左足を挟まれ併合9級(依頼者30代女性)
使用者責任を追及し、裁判基準で算定した損害額の大半を確保。最終的に約二二〇〇万円で和解。
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■事例2 倉庫内走行中のフォークリフトが右足首を轢過し併合8級(依頼者50代男性)
過失割合を巡り争点となったが、依頼者が早期解決を希望したため約一四〇〇万円で示談。
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■事例3 同僚運転のフォークリフトに足を轢かれ、労基が診断書を誤読し11級8止まりだったケース(依頼者40代男性)
医師と連携して診断書を補正し再申請を行い、9級11へ格上げに成功。
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■事例4 フォークリフトの爪上作業中に転倒し腰椎圧迫骨折(依頼者40代男性)
胸腰部可動域を追記した診断書を提出し、8級2を獲得。
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診断書に記載がなかった可動域を追記して後遺障害が認定された事例
会社・派遣先の会社に賠償責任を認めさせるための立証ポイント
1 事故態様の証拠化
ケースバイケースですが、事故態様を把握し、可能なら現場の写真・動画を撮り、災害調査を行っている場合は労働局から災害調査復命書を取り寄せたり、刑事事件になっている場合は刑事記録を取り寄せたりします。
2 安全衛生法令違反の有無
無資格運転、誘導員不配置、歩行者通路と走行通路の未分離、過積載走行など、労働安全衛生規則151条の2以下等を精査し、法令違反があるか精査します。
3 後遺障害等級の妥当性
診断書を作る際、負傷部の可動域や他覚所見を医師に具体的に記載してもらい、必要に応じて追記・訂正を求めます。
4 損害額の算定根拠
休業損害、逸失利益、将来介護費、慰謝料を裁判基準で積算し、労災給付との調整も行います。
労災保険給付と民事賠償の違い
労災保険は速やかな給付を目的とした制度であり、治療費全額給付や給与の約八割相当の休業補償が支給されます。一方、民事賠償は慰謝料や逸失利益、将来介護費を含めた包括的補償を実現できます。そのため、同じ事故でも民事賠償によって得られる金額が、労災で受給できる金額の数倍やそれ以上に増えることが珍しくありません。労災給付は民事賠償請求の障害にならず、むしろ企業側の過失を裏付ける公的資料として活用できます。
フォークリフト事故に特有の争点
- 運転資格の有無
最大荷重一トン以上のフォークリフトは技能講習修了が義務。無資格運転が確認されれば会社の過失は極めて大きいと評価されます。
- 歩行者対策
通路色分け、警報灯、ミラーなどの設備が未整備の場合、安全配慮義務違反が認められやすくなります。
- 高所作業の禁止
フォークの爪やパレットに作業者を乗せる行為は労働安全衛生規則で原則禁止。転落災害が発生した場合、会社の重過失が問題となります。
後遺障害等級と損害額の目安
フォークリフト事故では足指切断を伴う8級~10級が多く、労働能力喪失率は27〜45%に達します。30代の被災者が年収400万円の場合、逸失利益だけで3500万円を超えることもあり、適切な等級認定が損害額を大きく左右します。事例3のように診断書表記のわずかな不備で等級が二段階下がることもあるため、適切な行為障害の認定がなされているかの精査も不可欠です。
損害賠償に含まれる項目の具体例
1 休業損害
会社が労基へ提出した資料等を基に、事故がなければ得られたはずの賃金を100%補填。
2 逸失利益
症状固定後に労働能力が減少することによる減収分を補償。
3 傷害慰謝料
入通院期間と症状の程度に応じて裁判所基準表を参照し積算。
4 後遺障害慰謝料
等級別の裁判基準に従い、重い後遺障害ほど高額に設定。
5 将来介護費
継続的な介助が必要な場合、必要な介護費用を平均年齢分まで計算。
6 装具・住宅改修費
義足やリフト付き浴室など、障害に応じた補装具と住環境整備の実費を将来交換分まで見込んで請求。
弁護士に依頼するメリット
フォークリフト事故では会社側が「被災労働者にも過失がある」と主張して減額を図ることが少なくありません。当事務所は労災分野に特化し、医学的裏付けと安全衛生法令の両面から反論を構築します。事例1では過失主張を封じ、事例2では早期示談を実現。複雑な後遺障害申請もワンストップで対応し、被災者ご本人の負担を最小化します。
まとめ
フォークリフト事故は依然として重大災害の上位を占め、死亡や重篤な後遺障害につながる危険が高い労災です。労災給付のみで「一件落着」とせず、会社の安全配慮義務違反を的確に立証し、適正な賠償を受け取ることが被災者と家族の生活再建につながります。事故にあわれた方は、時効(原則5年 ※2020年4月1日以降に発生した事故の場合。旧法下の事故は原則10年)が進行する前に、早期に専門弁護士へご相談ください。当事務所は、迅速かつ納得のいく解決をサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。