労災事故直後・治療中にすべきこと【弁護士が解説】
1 労災を申請してください
業務中や通勤途中で怪我をされた場合、まずは労災を申請して治療を受けてください。
会社によっては、労災の申請を嫌がったり、または事故態様について会社に責任がなく自損事故のような形で報告をしたがるところもあります。
しかし、労災保険を使うことは労働者の権利です。
また、後々のことを考えれば事故態様はできるだけ正確に労働基準監督署に報告する必要があります。
労災を申請すれば、治療費の負担がありませんし、休業補償も受けられます。
会社によっては、治療費や休業補償を会社が支払うから労災を申請しないでほしいというところもあるかもしれません。
しかし、その場合、治療費や休業補償をいつ打ち切るかは会社(または会社が入っている保険会社)が判断することになりますので、非常に不安定な状態になります。これに対し、労災の場合、被災者保護の観点から適切な時期が来るまでは継続して給付を受けることができます。
また、労災を使わなければ、後遺障害の申請ができません。
後遺障害が認定されれば等級に応じて一時金や年金が労働基準監督署から支給されます。
そして、労災による後遺障害の認定がなければ、会社に対する損害賠償請求の際、後遺障害に関係する費目(後遺障害慰謝料と逸失利益等)の請求が困難になります。
そのため、まずは労災を申請してください。
会社が労災申請に非協力的な場合、まずはお近くの労働基準監督署にご相談ください。
ご自身の事故に労災が適応されるかどうかということについても、まずはお近くの労働基準監督署にご相談ください。
2 適切な治療・検査を受けてください
事故によって骨折・痛みやしびれ等のお怪我をされた場合、できるだけ早期に病院に行ってください。
事故直後から痛みがあったとしても、すぐには病院に行かずに事故から2週間後に初めて病院で治療を受けたような場合、その痛みが事故によって生じたものであることの証明が困難になるからです。
つまり、その痛みが事故によるものなのか、それとも事故から2週間以内に生じた別の原因によるものなのかという区別がつかなくなります。
そのため、できるだけ早期に病院に行ってください。
また、実際は肩も痛かったのにそのことをしばらく医師に告げず、2,3週間経過後に肩の痛みを訴えても、肩の痛みが事故によるものかどうかの判断が難しくなります。
そのため、異常がある箇所は全て正確に医師に伝えてください。
初回の治療時にすべての箇所を伝えるのが困難であっても、少なくとも2回目、3回目の治療時までには伝えたほうが良いです。
医師は、患者の説明をカルテに残しますが、伝え忘れていた症状があれば、それはカルテに残らないので最初からなかった扱いにされる可能性があります。
また、痛みがある箇所についてはできるだけ早期にレントゲンやMRI等の検査を受けてください。
どのような治療や検査を受けるかについては、具体的な症状によって異なりますので、まずはご相談ください。
3 証拠資料の収集
労災の場合、事故態様を裁判所や第三者に伝えることが容易ではありません。
例えば、機械で作業中に怪我をした場合、どのような形状の機械で、その機械がどのような動きをして、どのような作業をしている時に怪我をしたのかということを、口頭で説明することは困難です。
そして、治療を終えていざ会社に対して損害賠償をしようとしたところ、会社ではその機械をもう使っておらず、手元にないということもあります。
そうなると、余計に事故態様を説明することが困難になります。
そうしたことから、可能であれば、事故態様が分かる資料や現場写真を入手したほうがよいです。
もちろん、会社の許可なく事故現場に立ち入ることができないこともあれば、会社の許可なく写真撮影ができない場合もあるでしょうから、あくまでも合法的な手段で資料の入手が可能な場合に限ります。
場合によっては会社に頼んで写真保存をしてもらうということも考えられます。
また、重大事故で労働基準監督署が災害調査をした場合や警察が本格的な捜査をした場合は、労働基準監督署や警察・検察から調査資料・捜査資料を入手できる場合があります。
いずれにせよ、事故に関する資料は早期に入手したほうがよいです。
以上、事故直後・治療中の方に気を付けていただきたい点を記載しましたが、具体的な対応方法については、具体的なお怪我の状態や事故状況によりますので、まずはご相談ください。