会社から「労災申請するな」と言われた。どうすればいい?

労災隠しチェックシート

以下のひとつでも当てはまる場合は弁護士か労働基準監督署に相談することをお勧めします。

☑ 会社から労災申請をしないでほしいと言われた
☑ 治療費は健康保険を使って自己負担分は会社が支払うと言われた
☑ 休業補償は会社の任意保険から支払うから労災申請しないでと言われた
☑ 重症なのに軽症扱いされようとしている
☑ 労基に提出する書類の災害の発生状況が本当の事故状況と異なる

労災事故が起きた後、会社が「労災申請をしないでほしい。治療費は健康保険を使って自己負担分は会社が支払う」と言ってくることがあります。
労災申請をしたら会社が労働基準監督署から何らかの処分を受けるかもしれません。
労災事故が起きたことが知られたら元請けが新しい工事等を発注してくれなくなると考えるかもしれません。
単に手続きが面倒であると考えているかもしれません。
このように、会社は、被災者に対して、何らかの理由で労災の申請をしないように言ってくることがあります。
しかし、労災隠しは犯罪です。
労災事故が起きた場合、事業者は、労働基準監督署に死傷病報告を提出しなければなりません(労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則97条)。
被害にあわれた方にとっても、労災申請をしないと、療養給付(治療費)、休業補償、障害補償(後遺障害)等を受けることができません。
また、事故後、できるだけ早期に労災申請をしないと、そもそもそのような事故が本当に起きたのかということの証明のハードルが上がる場合があります。
そのため、会社から労災申請をしないでほしいと言われても、絶対に断って労災申請をしてもらってください。
もし、会社が頑なに労災を使うことを拒否した場合は、被災者ご自身で労災の申請をすることも可能ですので、会社を管轄する労働基準監督署にご相談ください。

労災は認めるけれど、軽症扱いにするパターンもあります。
労災事故が発生したら、遅滞なく労働基準監督署に労働者死傷病報告を提出する必要があります。しかし、休業が3日以内なら、労働者死傷病報告は期間ごと(3か月)にまとめて提出すれば良いと決められています。
また、休業が3日以内なら労災の休業補償の請求できません。
そのため、4日目以降は、働かなくてもいいので会社にいてほしいと言ってくることがあります。
労災事故で休業が4日以上ある場合、会社が是正勧告等の処分を受ける可能性がそうでない場合より高くなるので、できるだけ軽症扱いにしたいという思惑があります。
しかし、実際は重症なのに軽症扱いにして労働基準監督署に書類を提出していたら、会社に慰謝料などを請求した際、会社から「当初は軽傷だったのに、時間がたつにつれて不自然に症状が重くなった。重い症状が残ったのは事故とは別の原因があるはずだ」という反論を受けることがあります。
また、是正勧告などの処分を受けている方が会社の安全配慮義務違反が認められやすいです。
そのため、軽症扱いで労働基準監督署に書類を提出されそうな場合は、会社に抗議すると共に、場合によっては労働基準監督署に事情を説明したほうが良いです。

労災は認めるけど、事故の内容を変えるというパターンもあります。
労働者死傷病報告や治療費の請求書(療養補償給付の請求書)等、労働基準監督署に提出する書類には「災害の発生状況」を記載するところがあります。
その「災害の発生状況」に本当の事故内容を書かずに、会社に責任がない自損事故が発生したように書いたり、元請けに迷惑をかけないように、元請けの工事現場ではなく、自社の倉庫で工具の練習中にけがをした等と書く場合です。
いずれの場合も、会社に慰謝料などを請求する際に、「本当はこのような事故が発生した」ことの証明のハードルが上がるため、慰謝料などが認められない可能性が増えます。
そうならないためにも、本当の事故内容が記載されていない場合は、会社に抗議すると共に、場合によっては労働基準監督署に事情を説明したほうが良いです。

今回は、会社から労災申請をしないよう言われたときの対処方法を解説します。

1.労災報告は事業者の義務

業務中や通退勤中、業務に起因して労働者が怪我、病気、障害、死亡した場合には「労働災害」となります。
労働災害が起こったら、雇用者は必ず労基署に対して労災が発生した事実を報告しなければなりません。
このことを「死傷病報告」と言います。
死傷病報告は、労働安全衛生法によって定められた会社の義務なので、報告をせずに労働者に「労災申請をするな」と言うのは違法行為です。

2.労災報告しなかった場合の罰則

もしも労災が発生しても企業が死傷病報告をしなかった場合、刑事罰が適用されます。
罰則の内容は50万円以下の罰金刑です。

3.会社が労災隠しをしたがる理由

会社が違法であってもあえて労災隠しをしたがるのは、以下のような理由によります。

3-1.労災保険料が上がる可能性

労災保険を利用すると、企業が負担する労災保険料が上がる可能性があります。

3-2.イメージ低下

労災事故が起こったり従業員が病気になったりしたことで、企業に対する社会のイメージが低下する可能性があります

3-3.別の違法行為が明るみに出る可能性

長時間労働や労災保険への未加入など、労災事故をきっかけに別の違法行為が明るみに出る可能性があります。

4.労災申請するなと言われた場合の対処方法

4-1.すぐに労災申請する

勤務先から「労災申請しないように」とか「労災が適用されない」などと言われても、従ってはいけません。
労災に遭った労働者には労災保険を利用する権利があるので、速やかに労災申請をしましょう。
労災の申請書には、会社に押印してもらう欄がありますが、そちらについては記入しなくても「会社が協力してくれない」とさえ書いておけば受け付けてもらえます。

4-2.弁護士に相談の上、労災保険を適用して治療を受ける

ケガや病気の治療は、労災保険を適用して労災保険認定病院で受けましょう。
労災保険が適用される場合、労災保険認定病院であれば、窓口での負担なしに治療を受けられるからです。
それ以外の病院ではいったん費用を立て替える必要があります。
なお労災が適用される場合、健康保険を使ってはいけません。

4-3.弁護士・労基署に相談する

労災隠しは違法行為なので、会社から労災を使わないように言われたら労基署に相談しましょう。
労基署から指導勧告が行われ、状況が変わる可能性もあります。

神戸で労災事故に遭い、お困りの際には弁護士がお助けいたしますので、お気軽にご相談下さい。

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